20160229

2月25日(木)夜、自由学園明日館(池袋)にて、河島思朗さんの講座「古代ギリシア・ローマ神話7」を開催しました。今回は「人間の誕生2」でした。

プロメテウス神話と旧約聖書は、どちらも人類の誕生を「文明」と「不死」の二者択一、そして苦難や災いのはじまりとともに語るという、非常に似た物語になっていて、何らかの影響関係があったと考えられます。ただしややこしいことに、地理的に離れたインドネシア周辺に見られる「バナナ型神話」や、日本の『古事記』にも、その類型は見られます。直接の影響や、ただの偶然というよりは、神話というものに共通した性質のようです。

「神話はつねに創造される」と、河島さんは強調します。すでにある自分たちの文明・文化を前提として、その起源や理由を説明するために神話は創作されるものなので、神話を必要とする主体、時代が変わるたびに、神話も変化してゆくということかもしれません。

次回は3月30日(水)です(場所は同じですが、いつもと曜日が変わります)。今回の講座の後半、旧約聖書と比較しながら「洪水物語」の解説がありました。じつは人類誕生の物語の多くは滅亡の物語でもあり、それはなぜか……というお話から次回は始まるようです。ぜひ御参加ください。U
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20160226

4月の催事をお知らせします。青柳恵介さんの謡曲講座は最終回です。木村宗慎さんの講座の「精華抄」とは、『工芸青花』で毎号掲載している「名品選」的な記事。たとえば4号では隋の陶俑、平安仏、西洋中世の七宝、光悦色紙、李朝青花の面取瓶その他を紹介しています。写真は京都の柳孝さんで撮影した曾我蕭白。新出作品でした。S

■講座|青柳恵介|謡曲を読む6|江口
4月6日(水)19時@MGP矢来スタジオ(神楽坂)
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■講座|金沢百枝|キリスト教美術をたのしむ13
4月13日(水)18時半@自由学園明日館(池袋)
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■講座|河島思朗|ギリシア・ローマ神話9|オリンポスの神々1
4月21日(木)18時半@自由学園明日館(池袋)
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■講座|木村宗慎|古美術入門4|精華抄より
4月24日(日)15時@MGP矢来スタジオ(神楽坂)
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■講座|中村好文|住宅設計入門1
4月27日(水)18時@自由学園明日館(池袋)
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*受付終了しました。




20160224

2月18日(木)夜、自由学園明日館(池袋)にて、金沢百枝さんの講座「キリスト教美術をたのしむ11」を開催しました。モーセの物語の3回目です。前回講座の反響から、今回はキリスト教だけでなく、ユダヤ教とイスラム教の文書で、共通の物語がどのように記述されているかに注目しました。

たとえば「出エジプト記」の契約の場面。神の足もとは「青玉の敷石の細工のよう」という記述があり、この場面を描いたカロリング朝の写本では、天国を表す部分と地上を表す部分の間に海が描かれています。それは、空の上にも海があると考えるユダヤ教の世界観がもとになっているそうです。「コーラン」ではムーサー(モーセ)は知識を誇る人物としてしても記され、イスラムの賢人アル・ハディールと対話する話も収められています。

これらのテキストを読んでいると、不思議な記述がたくさん出てきます。それはどういう意味なのか、なぜ違いが生まれたのか、文書を読んでから作品を鑑賞することで、それぞれの表現が生まれた過程を追体験するような気分になりました。『サラエボ・ハガダー』のファクシミリ版ほか、金沢さんが持参してくださった関連書籍に参加者の皆さんも興味津々のようでした。

次回は3月15日(木)です。ぜひ御参加ください。U
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20160223

美術史家・金沢百枝さんのブログ「キリスト教美術をたのしむ」、更新しました。今回は「降誕2|なやむ」です。〈しかし、まったく身に覚えがないのに、いいなずけのお腹がしだいに大きくなってゆくのを見て、ヨセフも心中穏やかなはずがありません〉

今回はいつにもまして挿図が多様です。マリアとイエスが主役の降誕図ですが、ヨセフの表情、しぐさに着目します。〈実際、がっつり眠るヨセフもよくみかけます。マリアがなにか問いかけていますが、しばらく起きそうにありません……〉。S
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20160222

昨日、古道具坂田の坂田和實さんの本『ひとりよがりのものさし』(新潮社)の増刷が決りました。8刷です。2003年刊で、2年に1度くらいずつ、こつこつと(といういいかたはへんかもしれませんが、そんな感じで……)増刷してきました。この連載を担当したことは、私にとって決定的でした。感謝しています。

坂田さんのところでは先週、『工芸青花』の取材をしました。いつものページのほかに、次号では坂田さんほか8人の方々に、あるひとつのテーマを考えていただきました。天平古材も洗濯板も、骨董のよさは権威主義的ではないところ、個人主義的なところ、と思ってつづけています。S




20160218

年3回刊と思って安心していると(月刊誌出身なので)、季節はすぐにめぐってきます。『工芸青花』5号は4月刊をめざしています。きえてゆくことを、すこしずつでも記録することが自分の仕事だろうかとこのごろ思っています。物はのこるけれど、物のまわりのこと(たとえば感覚、思考)はうつろってゆきます。

河島思朗さんの講座「ギリシア・ローマ神話」、次回は2月25日(木)夜です。神話作者の動機の話などもきくことができます。S
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20160215

2月10日(水)、MGP矢来スタジオ(神楽坂)にて、青柳恵介さんの講座「謡曲を読む5|蟬丸」を開催しました。この講座では、謡曲のテキストを読み、その典拠となる伝承や、同じ題材が文学史のなかでどのように展開したかを見てゆきます。

百人一首でもおなじみの蟬丸ですが、「俊頼髄脳」では逢坂の関に庵を結ぶ琴の名人として登場します。それが「今昔物語」では源博雅が琵琶を習う盲目の雑色とされ、さらに「平家物語」では醍醐天皇の皇子となります。謡曲の「蟬丸」はこの二書を典拠としているようです。青柳さんはこうした変奏について、蟬丸の歌のように異同があるものは口承で伝わったものが多く、平安時代に「蟬丸伝説」のようなものがあったのではないか、能者が蟬丸を始祖として神格化するにあたって(鴨長明「無名抄」でも逢坂の関の明神となった蟬丸への言及があります)、さらに「設定」が追加され、悲劇性を強調する曲になったのではないか、とのことでした。

蟬丸の姉の逆髪も「坂神」が由来、つまり逢坂の神であるという説があるそうです。逢坂は恋の歌にも詠まれますが、境界の場所、一種のアジールでもありました。冒頭の「定めなき世の中々に、定めなき世の中々に、憂き事や頼みなるらん」という言葉が象徴的です。

青柳恵介さんの謡曲講座は次回が最終回、4月6日(水)「江口」です。はじめての方も、謡曲から広がる古典文学の世界にぜひふれてみてください。U
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20160212

4月からはじまる建築家・中村好文さんの連続講座「住宅設計入門」ですが、定員に達しましたので募集をしめきりました(会員限定でした)。ありがとうございました。参加者のみなさんには、後日受講票をお送りします。

来週18日(木)夜は美術史家・金沢百枝さんの講座「キリスト教美術をたのしむ11」です。「キリスト教以外のモーセ伝承についてお話するつもりです。毎回、本を持参しています。前回のイスラム写本が好評だったので次はユダヤ教写本かな」(金沢さん)。お待ちしております。
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この3月に刊行する本の色校がとどきました。書きおろしの文章をはじめて読んだとき(ずいぶんまえのことです)、「これは本にしなければ……」という思いがつよくこみあげてきて、意味もなくそわそわしたことをおぼえています。ひとえに私のせいで、刊行がここまで遅れてしまいましたが、古いものが好きな人もそうでもない人も、できれば多くの人に手にとっていただけたらうれしいです。書名は『李朝を巡る心』。刊行日が決ったらまた御案内します。よろしくお願いします。S




20160201

今日は朝から撮影しているうちに出張つづきの疲労も消えました。青柳さんのぐい呑もありました。モノもクスリですね。

青柳恵介さんの講座「謡曲を読む」、次回は2月10日(水)夜「蟬丸」です。盲目の皇子蟬丸と、その姉で流浪の狂女逆髪の出会い、別れ。〈能の舞台に溶けていた詞章を、彫り出すように謡曲を読むこと、それが私のやってみたいことである〉

シリーズもあと2回。言葉ってなんだろうというところに、毎回糸がたれてゆきます。つらいような、安心なような。会員以外の方も御参加いただけます。お待ちしております。S
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