1 時代木桶 江戸時代





『工芸青花』編集長の菅野さんから、「栗八さんの花を撮りたい」とお話があったのは3年前です。栗八は屋上で多くの山野草を育てており(すべてプランターなのですが……)、その種類は把握できないほどの数になっています。毎年、痩せた土を捨て、根をほぐし、新たな土に入れ替え、種を蒔いて育てている草花です。ここで蝶が孵化し、ミツバチもやってきます。飼っている保護猫たちには青草やプランターの下は恰好の休憩場にもなっています。晴れた日には、屋上でコーヒーを飲みながら花を眺め、猫たちと休憩するのが憩いでした。日常に花を活ける習慣はなかったのですが、花器に使える様々な古器は好きでよく買いますので、菅野さんの提案にのってみました。花は素人で、見よう見まね、まったくの我流です。手折った野花と花器が活かされているとすれば、菅野さんの写真と、美しく咲いてくれた野花や花器のおかげです。

まだ花の撮影は続けていますが、世界中がコロナ禍にあった3年間を、野花の成長を眺め、花器を探しながら静かに過ごせた私の記録でもあります。ブログを訪ねてくださった、骨董数寄、花数寄の皆さんに楽しんでもらえる連載になれば何よりです。

数寄者が誂えた箱に収まる、時代を経た手付桶です。味が良く小ぶりですので、茶席へ酒器等を運ぶ際にでも用いたのでしょうか……。前所蔵者の想い(見立て)を想像してみるのも楽しいものです。木味、大きさ、姿すべてが私にとって好ましい手桶ですが、かつてこれを雑多な民具類の中から見つけ出し、箱を誂え、愛玩してきた同好の大先輩の心根に感謝しかありません。

花は茶碗蓮の葉です。葉も花も小さくかわいい蓮で、毎年深鉢の中で芽吹いてくれます。花の時期は短く、なかなか撮影日のタイミングとは重なりませんが、葉だけでも何とか様になった気がします。仙厓さんの軸(南無大師遍照金剛)のおかげでしょう。





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