青花のブログ「ホノグラ的骨董」(以下)でもおなじみの骨董商、小松義宜さんによる展示です。骨董商の役割とはなにか──物を後世につたえるだけでなく、人の思いも残すこと。おそらくそう考えている小松さんが紹介する、知られざる埴輪コレクション。
https://www.kogei-seika.jp/blog/gyakko/001.html


会期|2024年2月23日(金)−27日(火)
   *2月23日は青花会員と御同伴者1名のみ
時間|13時−20時
会場|工芸青花
   東京都新宿区横寺町31 一水寮(神楽坂)
出品|小松義宜(honogra)








今展によせて  小松義宜


今回の埴輪を収集したのは、廣瀬榮一(1905−91)。茨城県石岡市で酒造業を営む廣瀬商店の6代目で、「白菊古文化研究所」の設立者。考古学者・原田淑人、人類学者・長谷部言人に師事し、遺跡の調査と古物の収集を行なった。廣瀬氏が活躍した時期は戦後日本の新時代ともいえる高度経済成長期で、それまで永遠の眠りについていた古代遺物が道路や住宅の建設工事のために掘り起され、次から次に考古学上の大発見があった。他方、遺跡の破壊が進んだ時期でもある。
 廣瀬氏は、自身が発掘調査を行なった「乗鞍第一号窯址」の報告書の序文にこんな一節を書き残している。
〈なおわたくしたちが発掘調査したこれらの窯はすべて壊滅に瀕したもののみであった。微力ながら亡失していったこれらの窯のために、一握の手向け草として、ささやかな調査記録をここに捧げる次第である〉
 そのように思いを注いだ考古遺物が、現在は流出し、廣瀬氏の仕事も知られぬまま散佚しようとしている。今回の展示品の多くは陶片。陶片は完品の参考資料と見なされがちだが、完品と比べて美しさが劣るものではない。むしろ形が際立ち、線が美しく見えたりもする。
 埴輪の陶片美と、故・廣瀬榮一氏の業績を御覧いただけましたら。










撮影|奥山晴日(全て)
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