豊永さんは沖縄在住の張り子作家です。琉球張り子の伝統にそくした仕事とともに、あらゆる矩(のり)をかるくこえてゆく作品群、その豊永印に魅了される人が多くいます。素材も多彩で、前回、2018年に青花でおこなった「沖縄ギリシア神話」展では、張り子のほかに陶器や漆器、カルタなどもならびました。今回の主題は「旧約聖書」です。アダムとエバ、ノア、ヤコブ、アブラハム……。美術史家の金沢百枝さんを導き手に、旧約を読みこんだ豊永さんが咲かせる、人類草創の物語の花々。
会期|2021年9月24日(金)-28日(火)
*9月24日は青花会員と御同伴者1名のみ
時間|13-20時
会場|工芸青花
東京都新宿区横寺町31-13 一水寮101(神楽坂)
協力|金沢百枝(美術史家)
講座|豊永盛人+金沢百枝|人形劇「旧約ものがたり」
日時|9月26日(日)17-19時
会場|一水寮悠庵
東京都新宿区横寺町31-13 (神楽坂)
定員|15名
会費|3500円
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=640
豊永盛人 Morito Toyonaga
1976年生れ。沖縄出身、沖縄在住。沖縄県立芸術大学を卒業後、張り子の郷土玩具を作り始める。2002年郷土玩具店「玩具ロードワークス」を開く。郷土玩具を中心とした個展を開催したり物産展等に参加している。
展覧会によせて 豊永盛人
こんにちは、豊永盛人と申します。普段は沖縄で張り子の郷土玩具などを作っています。青花での展示は2回目で、前回は河島思朗さんにお手伝いしていただいてギリシャ神話をテーマに制作しました。今回は金沢百枝さんに色々教えていただいて、それこそ生徒の一人のようにネット講座を受けさせて頂きました。テーマは旧約聖書。金沢さんに紹介して頂いた中世の絵やロマネスクの彫刻はとても胸をときめかせてくれるものがいっぱいで、自分の力だけではどう調べても見つからないような面白いものばかりで、見ていてとても元気になります。今この文章を書いている時点ではほとんど何も仕上がってなくて自信を持って「こんな展示会になりますよ! 皆さまよろしくどうぞ!」とは言い難いのですが、今は、ああいうの作るぞ、こういのもいいな、あれもできるかなと、ただただ楽しみでワクワクしています。
今回は張り子だけではなく、木漆工とけしさんと一緒に勉強している漆絵や箔絵の器、石川昌浩さんのガラスの器にエナメル彩色で描いたものも並ぶ予定です。キリスト教徒でもユダヤ教徒でもイスラム教徒でもない僕がにわかに勉強して作った物なので、何の信仰の対象にもならないし、ご利益もきっとないですが、旧約聖書の内容をほとんど初めて知って、びっくりしたり笑ったりドン引きしたり感動したりした僕自身の発見が詰まった展示にはなると思います。楽しんでいただけたら幸いです。よろしかったらよろしくお願いします。
豊永さんの作品 金沢百枝
豊永盛人さんのつくるものにはふしぎな魅力があります。沖縄の伝統的な張り子の作家ですが、その懐はひろい。その発想の柔軟さはどこからきているのだろうと考えるとき、工房をたずねたときにみせていただいた、豊永さんが美大の彫刻科時代につくったという、夜中にあるきだしそうな大作と、子どもさんたちのためにつくったおもちゃを思いだします。鋭い造形感覚と、尽きない遊び心。
今回、私の講座「キリスト教美術をたのしむ|旧約篇」とのコラボが決ってから、LINEグループをつくりました。そこにしばしば豊永さんから、ふしぎなメッセージが届きます。「ヤコブとエサウはどうやって仲なおりしたの? 絵はない?」など、物語を読みこんでいないと出てこない質問です。どんな作品がならぶのか、とてもたのしみです。