今年もロシア在住の骨董商、毛涯達哉さんの展示をおこないます。昨年の「スキタイ」展はそのまま『工芸青花』の特集になりましたが(以下)、毛涯さんのよいところは、美術鑑賞と歴史研究を不離のものと考えていること。たしかに、(ヒトの手によりつくられた)物は、歴史のかけらなのだと思います。
https://www.kogei-seika.jp/book/kogei-seika016.html
会期|2021年7月30日(金)-8月3日(火)
*7月30日は青花会員と御同伴者1名のみ
時間|13-20時
会場|工芸青花
東京都新宿区横寺町31-13 一水寮101(神楽坂)
出品|毛涯達哉(神 ひと ケモノ)
通信講座|毛涯達哉+金沢百枝|古代の地母神と偶像
https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=631
毛涯達哉 Tatsuya Kegai
古美術商。1980年東京都生れ。東北大学で古環境学、古生物学を専攻。大学院中退後、クラシック音楽関係の会社に就職。仕事の合間に独学でロシア語を習得し、2014年にサンクトペテルブルクへ移住。ロシア内外を旅しつつ、オリエント及びロシア正教の美術品を紹介している(屋号は「神 ひと ケモノ」)。ロシアではアマチュア・ピアニストとしても活動。
原始、女性は実に太陽であった。 毛涯達哉
古代オリエント世界では先史時代から、地母神を中心に様々な女神が祀られていた。地母神は大地の生命力を人間に付与する存在への信仰から生まれた女神で、主に豊饒多産を司る。一方、性別不明、そもそも人間の姿を模していない偶像も存在する。顔から手足が生えていたり、複数の頭や肥大した目を持っていたり。抽象的な形の像もある。そうした奇妙な偶像は、無文字時代のものがほとんどだ。人類が世界を認知するために創作した「神話」にもとづき、祭祀に用いられたとされる。それらの像の造形は洗練されており、稚拙とは言い難い。人間が見た「生命のかたち」と形容できるかも知れない。
今展で紹介するのは、紀元前5000-1000年紀のオリエントを中心とした偶像、地母神。そしてそこから派生し習合されていったギリシア・ローマの神々。ビザンチン以降の聖母子像。異教禁止令や、男性優位の宗教、社会が確立するなかで忘れ去られた神々から聴こえてくるのは、(現代とは異なる意味での)豊かな文化が生み出した「生命の賛歌」ではないだろうか。