「生活工芸」とは、2000年代に前景化した生活文化の一潮流で、個人作家の作品が主ですが、彼ら彼女らをささえたのは、各地に点在する個人経営のギャラリーでした。長野市、善光寺参道にある「夏至」もそのひとつで、しかも2002年の開廊以来、カラーをまもりぬいている──ようにみえます。いうまでもなく生活文化の流行はめまぐるしく、よくもわるくもながされる人々が多いなかで、「夏至」の宮田さんが、この20年間手ばなさずにいるものはなにか、それが知りたいと思いました。


会期|2023年6月30日(金)-7月4日(火)
   *6月30日は青花会員と御同伴者1名のみ
時間|13-20時
会場|工芸青花
   東京都新宿区横寺町31 一水寮(神楽坂)
監修|夏至







水のフレーム   宮田法子(夏至)


10代の終わりの頃、気に入りの美術館が幾つかあった。近県の現代美術館や地元長野の私設美術館。それらは美しい庭園を携えていたり、森の中や湖のほとりに建てられていて、山国育ちの私にとって樹々や星々を愛でるに等しく、一人の安住の場であり、同時に外界へと繋がる冷んやりとしたトンネルのような存在であった。
 今思えば、自分と作品、作品と空間、空間と外界との関係性、そんなものに見惚れ、憧れていたのだと思う。形あるものを見ながら、形なく漂う気配みたいなものを愉しんでいた。
 そんなぼんやりとした憧れが掌から霞み始めたころ、ふと、気がつく。それはこの小さな部屋やアパートのテーブルの上、どんな場所でも創ることができ味わうことができるのだ、と。
 今も、ものから色々な世界を見ている。ものを通し朝の光を感じ、ものを通し誰かと会話し、ものを通し自分を知る。水道から流れる水もコップに注がれた水も、等しい。でも、今日の水は美味しいとか、注いだときの気泡がとても綺麗とか、それを気づかせてくれるのはコップと私たちの感受性だ。一杯の水を、新しい朝がくる日常を切り取ることがものの一つの役割なのだとしたら、美しいコップを朝日に翳し、その美しさごと体内へと流していきたい。
 今展では "軽さと重さ"をテーマに、作家たちが青花展に向け作品を制作して下さいました。夏至の日を過ぎる頃、品々を携え長野より参じます。みなさま、ふらりとお出掛け下さいませ。








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「夏至」の空間
村田匠也作品
加藤尚子作品
梶原靖元作品
林友子作品
濱野太郎作品
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