一昨年につづき、書家の日置路花さん(1936年生れ)の展観をおこないます。今回は小品が主です。この9月まで、坂田和實さんの個人美術館as it isで、路花さんの書の展示がおこなわれていました。坂田さんは路花さんの書について、〈拙とか只とか素といわれている世界 〉に〈限りなく近い〉としています。路花さんは長年、子どもたちに書を教えてきました。2015年に「文字の美」展を開催した日本民藝館の月森俊文さんは、「子どもの字、その無心の美が路花さんにはわかっていて、そこに自身の書を近づけようとしてきたのではないか」と語っています。しかも、作為をこえて。現代の作家にとって、それはとても困難な道です。陶芸家の安藤雅信さんは『老子』の〈大巧若拙(大巧は拙なるがごとし)〉を引いて、路花さんの書と生活工芸派の器に共通する「拙」(への志向)性をみいだしています(こうした「坂田+路花」論は『工芸青花』15号で特集します)。作家にかぎらず、無心であることはむつかしい。けれど、路花さんの書は、そのたたずまいとありようによって、無心なるものへの回路となりえているようにみえます。


会期|2020年9月25日(金)−10月4日(日)
   *9月25日は青花会員と御同伴者1名のみ
時間|15-19時
会場|工芸青花
   東京都新宿区横寺町31-13 一水寮101(神楽坂)












上から
うま酒に酒菜持つてこよいつもいつも草の庵は宿にかさまし 良寛
ほろほろとむかご落ちけり秋の風 一茶
はらわたもなくてさびしや唐辛子 子規
蛼(こおろぎ)のふと鳴き出しぬなきやみぬ 漱石
地をはっても生きていたいみのむし 住宅顕信
トップへ戻る ▲