古道具坂田の坂田和實さん(1945-2022)が昨年11月6日になくなって約1年。青花とはゆかりふかく、つねに道標となる表現者のおひとりでした。あらためて、追慕の意をこめて、10月末と11月末にふたつの展観をおこないます。
 11月は古美術商(甍堂)の青井義夫さんの展示です。〈僕が扱うものはボロボロだったり欠けていたり、甍堂にある名品とは比べものにならないのですが、それでも、どこか共通したところがあるようにも思うのです。それは僕にとって、青井さんという人に寄せる信頼感であり、安心感でもあります〉(坂田和實「骨董屋 青井義夫と坂田和實」『工芸青花』3号)。同対談で、青井さんもこう語っています。〈『銀花』で知った坂田さんのお店を、いまは亡くなった女房と訪ねた。あれが始まりだった気がするんです。(略)自分たちの店もあんなふうにできたらいいねと話したりした〉
 骨董商として歩んだ道は別々だったかもしれないけれど、青井さんと坂田さんには、ずっと、あたたかな情のやりとりがありました。稀有なことと思います。今展は、青井さんが故人をしのび、「坂田さんがよろこんでくれそうなもの」をあつめ、みずから陳列するものです。


会期|2023年11月24日(金)-28日(火)
   *11月24日は青花会員と御同伴者1名のみ
時間|13-20時
会場|工芸青花
   東京都新宿区横寺町31 一水寮(神楽坂)
出品|青井義夫(甍堂)


講座|青井義夫+勝見充男+月森俊文|古道具坂田と私たち
日時|11月24日(金)18-20時
会場|BOOTLEG gallery
   東京都新宿区改代町40(神楽坂/江戸川橋)
https://store.kogei-seika.jp/products/lecture-kogei-72







青井義夫 AOI Yoshio
古美術商。「甍堂」主人。1949年東京都生れ。1977年開業。池袋、鎌倉・京都、日本橋、京橋を経て、現在は一番町(東京)に店を構える。〈骨董が細分化し専門店化してしまうのはつまらない。ブリキの玩具も平安の仏像も共に楽しいではないかというのが青井さんの主張である〉(青柳恵介『骨董屋という仕事』)。


今展によせて   青井義夫


この度は在りし日の坂田さんのお店を再現出来ないかと言うお話があり、私なりの思い出をたどって、及ばずながらお受けしてみる事にしました。
 私が初めて古道具坂田を訪ねたのは、半世紀もの前のことです。そして20代の終り頃、池袋に店を出したので、それ以来よくゆききさせていただきました。国籍を超えた品々がぽつりぽつりと配置され、何も飾られない余白も美しく、柳宗悦が日本民藝館の展示に込めた「陳列は技芸であり、芸術である」という言葉を思い出しました。坂田さんの選ぶ木のもの、金属のもの、陶磁器、染織品……それらの素材の、日常使うものから宗教美術まで、半世紀近くのもの間一貫して変わらないものでした。
 今回は展示即売会ということもあり、坂田さん好みと思う品々を数多く出品させて頂きたいと思っておりますが、淡々として静かで、そしてあたたかな、さりげなく季節の花も生けてある、あの店内の空気を少しでも表すことができましたら幸いです。










上から
リモージュ・キリスト像 ロマネスク時代 49.8×36.8cm(額)
デルフト白釉花生 高15.4cm
聖女刺繍裂 15世紀 21.8×8cm
白磁扁壺 李朝時代中期 高20cm
刺繍裂 桃山時代 9×23.4cm
草文石皿 江戸時代後期 径27.5cm

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