疫病の広まり、それに伴って生じる畏れと忌避の連鎖によって、予想よりいささか早く、社会に貧しさがやってきそうです。これで工芸の時代が本格的に到来するんだろうか、と思ったりもしましたが(29回記事参照)、今のところ、どうもそうではなく、むしろしばらくは雑貨の時代が強化されるのではないかと僕は見ています。
この4月、当店でも企画展の準備をすすめていたため、開催をどうするかについて、いささか悩みました。会を取りやめ、自分が飢えるのは別に構わないし、貧には慣れているのですが、作り手とその家族が飢えるのは嫌だな、と思い、しばし考えたすえ、会自体は行うこととしました。これまでふだん告知に用いてきた葉書は送らず、知っている人が来るのは拒まない、ぐらいのスタンスで店を開き、来れない方々のために、商品全種類を撮影してSNSに掲載し、簡易的にネットショップのように対応を行う。問い合わせがあれば、別の角度から撮影した写真を複数枚送り、確認を取った上で入金いただき、梱包して発送。ほとほと疲れましたが、多くの方に声掛けいただき、それなりに数字が確保できたことには安堵しました。ただ、感想としては、試みとしては良かった、しかし同じことを繰り返したくはない、です。以下に、会期終了後、その理由を含め、告知した文章を転載します。
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坂本創展、終了いたしました。
疫病が広まる中での会、どうしたものかと思いましたが、創くんが結婚して子供も生まれ、30歳を迎えて最初となる会を中止とするのもしのびなく、防疫に細心の注意を払いつつ行うことといたしました。また、今回はこのような状況への対応として、全種類をSNSを通じて掲載する、という試みを行いました。多くの方々にお声掛けいただき、なんとか会を終え、創くんへも支払いがきちんと行えます。心より感謝申し上げます。ありがとうございます。
今後、大型連休中は、坂本創展に並んだものから、仕入れ扱いにしたもの少し、そして硝子や漆器・籠といった新入荷品を中心に常設といたします。店自体は、来店は推奨できませんが、静かに開けています。大濠公園、舞鶴公園へのお散歩のついでに、あ、そういえば、と思っていただければ幸いです。お隣の珈琲美美さんも豆売り・テイクアウトで営業中です。
また、五月の企画として、「石川昌浩、硝子の仕事・二十年」を予定しています。次回の会に関しては、坂本創展のようなSNSへの全品掲載は行わず、他の方法を考えます。今回のように、お問い合わせをいただいてから何度も写真を送って遣り取りを行う方法自体は、いいなとは思ったのですが、創くんのものの売り方と石川くんの売り方は、どうも違う姿であるべきな気がするのです。創くんの仕事のように、年に窯を焚く回数が少なく、できあがる器の個体差も大きく、バリエーションも多い仕事であれば、今回のようなやり方もいいのでしょうが、石川くんのように、バリエーションが多いわけではなく、むしろ定番にこそ光を当てたい仕事、しかも全国各地に彼の仕事を扱う配り手がいるような場合だと、各地の配り手を頭越しにしてものを渡したいとは思えないんですよね......。
あと、相変わらずちゃんとした形でネットショップを作る気持ちが湧いてこないのです。現在のような状況が続くと(続くでしょうね)、ネットでものを売り、買っていく仕組みが充実してゆくのは必然ですし、僕もそのような仕組みを用いて買い物をしたりもします。ただ、自分たちが扱っているようなものを売るための仕組みとして、カートに入れて、はい精算、みたいな流れが望ましいとはどうも思えない。
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https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=370