幸か不幸か、日野さんに誰かのものを卸してもらう、という機会はしばらく来なかったのですが、その後も木村硝子店の方々からは、ことあるごとに日野さんの話を聞いていたので、だんだんと日野さんという人自体に興味がわいてきました。日野さんはどんな「問屋」なんだろう、そもそも「問屋」ってなんだろう、と。そんな時、日野さんが店をふと訪ねてくれたことをきっかけに、日野さんの仕事を紹介する会をはじめました。最初のテーマは「ごはん」。米を食べることに関わるものであればなんでも、茶碗や箸からしゃもじやおひつ、釜、たわしなどに至る、多様な素材・仕事が揃う会でした。その時日野さんが書いてくれたのが次の文章です。
〈仕事をしながらつねづね考えることは「作り手はすごい」ということですが、さらに「売り手もすごい」と思っています。わたしは「作り手と売り手をつなぐ」仕事をしており、それはそれで意義があることなのですが、「お店を構えて、使う人に直接、伝える」という「売り手」はわたしの仕事に比べると何十倍もパワーのいる仕事だと思うのです。なので今回、このような企画を立てていただき、正直言いまして「問屋は脇役であれ」という自分の趣旨には反するのですが、信頼する工藝風向の高木さんからのお声がけ......というのは光栄なことなのでお受けしました。いつもはこれらの品を、バラバラな店に細かく卸しています。それぞれの店で、同じ品が違った顔で見えるのがとても面白いです。こんなにたくさんの種類を一つの店に送ったことはありません。それぞれの品が、工藝風向さんで、違った見え方をするのが楽しみです〉
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