こんにちはー。骨董通販サイト「seikanet」が始まりました。栗八も出品させていただいています。ぜひアクセスしてみてください。

さて、「seikanet」のスタートと同時に掲載を始めた骨董入門コラムの4回目です。これから古美術骨董を買ってみたいと思われている方、むずかしそうで……と入口でためらわれている方にご一読いただければうれしいです。

今回からは「ものが分る(目利き)」についての実践編です。前回までが「ゼロからの骨董入門」でしたので、相当、即効性のあるお得なブログと云えます(自賛)。

■モノがワカラナイ
初心者のうちは、私もそうでしたが、古美術骨董を分らないことが何だかとても損(?)をしているような気がして、おおいに焦ったものです。「分らないものは、ワカラナイ」と泰然とはしていられませんでした。

せっかく古美術に興味をもって、ネットや催事、古美術店を訪ねるのに、何が良いものか「よくワカラナイ……」。蒐集初心者の頃は、こんな不安と焦りを感じる方も多いのではないでしょうか。実はそのような不安や焦りはまったくの杞憂なのですが、私もそれに気づくまでにはずいぶんと背伸びをしてきました。「分らないものは、ワカラナイで良い」と納得できるまでには、やはり相応の時間が必要なのかも知れません。

当然ですが古美術骨董と呼ばれる分野には、実に様々な品があります。古書画、鑑賞陶器、茶道具、時代工芸、近世工芸、仏教考古美術、西洋骨董、古布、民芸等々、あらゆる過去の文化遺産が古美術骨董のジャンルです。これら全てを「ワカル」と云う方が異常なので、並みの人間ではとても無理です。古美術骨董の世界は分らないものだらけですので、「ワカラナイ」自分に焦りや不安を感じる必要はまったくないのです。

では「何もワカラナイ」ままで良いかと云うと、それでは古美術蒐集の面白さもワカラナイことになります。前置きが長くなりました。章をあらためます。

■モノがワカル
モノの良さや価値が分ってこそ初めて蒐集意欲に結びつくのですから、「モノがワカラナイ」ままでは蒐集意欲も当然にわいてきません。モノが分らなければ古美術の蒐集などツマラナイものと思います。どなたも最初は面白そうとか、ちょっと使って(飾って)みたいとか、軽い気持ちで購入された古美術骨董であったでしょう。使っていれば楽しいし、気分も何となく違います。でもそんな目新しさ、ささやかな喜び、カルチャーショックは長くは続きませんね。更なる充実を次の古美術骨董に求めて、ネットや催事を訪ね続けても、以前ほどの高揚や満足感を購入された品々から受けることは、自然となくなってしまいます。

「モノがワカラナイ」と云うことは、古美術蒐集の面白さ(醍醐味)がワカラナイことになってしまいます。多くの初心者の方が実はここまでで、古美術骨董の本当の楽しさを知らずに蒐集から離れてしまいます。モノや暮らしにこだわり、楽しむセンスのある方は、素晴らしい蒐集家になれる素質を潜在的に持っていると思いますので、ほんとうに残念なことです。「モノがワカル」ようにさえなればおおいに楽しくなったのに……です。

■ワカルようにナル
「モノがワカルようにナル(目利きになる)」なんて、これは相当の経験と修行を積まなければ無理なのでは……と思われてしまいそうですが、モノがワカル(目利きになる)ための修行は、実のところはほんとうに単純な修行(学習)で可能です。

ステップの第一は「名前を覚える」です。手はじめに、面白そうとかちょっと使って(飾って)みたいとあなたが以前に購入された品の、名前を調べてみることです。例えば「伊万里の皿」です。そんなことは言われなくても知っています、と反論されそうですが、それでは名前が分ったとは云えないのです。

「初期伊万里吹き墨鷺図七寸皿」とか「古伊万里赤絵紅毛人物文蓋茶碗」とかのフルネームを覚えることです。「何だかむずかしくて、読み方のワカラナイ字も多い......」ですね。そこをクリアすることが第一歩です。読み方がよく分らなければ、自己流の読み方で覚えていただいてもとりあえずは結構です。

さて、ここで第一ステップをクリア出来ているかどうか、あなたが今まで購入された古美術骨董品を出してきて試してみてください。他の方が、その表記を見ただけでだいたいの様子が想像できる名前(名称)がきちんと言えましたか? あんがい難しいですよー。

全部はとても言えなかったでしょうね……。「名前なんてちゃんと知らなくても、ホンモノかどうかくらい分る!」と反論されそうですが、こちらも「ワカッテナイナー」と反論します。感覚やセンスだけでも古美術骨董は買えます。極論ですが、お金さえ出せば古美術骨董は買えます。モノが分っても分らなくても買える訳です。

ふりだしに戻ります。「モノがワカラナイ」からつまらなくなり、不安になったりする訳です。「モノがワカル」とは、真贋以前に、蒐集された品に正確な名前をご自身で付けてあげられることです。

名前だけでその品が凡そ想像できるくらい正確に言うことは、簡単そうに見えて実は容易なことではありません。私も未だにほとんどの古美術品(ジャンル)の品名を正確に言えませんから、どうかガッカリしないでください。この文章をここまで熱心に読んでくださった方へ、次回までの宿題は「持っている古美術品の名前を正確に覚える」です。

名前が判らなければ、同じような品の出ている古美術骨董誌や図録を早速引っ張り出して調べてみてください。それでも無理なら図書館か美術館、博物館、ネットで検索もありですね(でも、何て検索するのかな?)。

次回は「目利きへの道」ステップ2です。あれ、タイトル変わったかな……。


上・下|古備前掛け花入 桃山時代 高12cm

仕立の良い外箱に「備前ウツク丸 花生」と墨書きされ、古布の仕覆に包まれる小壺です。口に歪みがありますので、あるいは窯跡発掘の壺かも知れません。歪みの箇所を正面として裏に銅の掛け金具が付けられています。掛け金具は錆びのある鉄金具の方が似合いそうですが、比較的きれいでもの足りません。致し方ありません。高さ7寸(21センチ)に満たぬ壺を「蹲(うずくまる)」と呼び、茶席等の小間でも映えるため、古窯壺の中でもひときわ愛玩される傾向が強いものです。この壺の箱や仕覆の丁寧な仕立てもその様な背景があってのことでしょう。窯場に無造作に捨てられていた壺が拾いあげられ、仕覆や箱に収まり道具として愛玩され伝えられていく……。骨董を愛好する日本人が作り上げてきた「慈しむ心で伝える文化」はこの古壺からも感じとることができます。



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