撮影|森岡督行(2点とも)

7月1日(水)

銀座7丁目のライトパブリシティへ。同社の杉山恒太郎さんと伊藤昊の写真について対談。『BRUTUS』の誌上にて。「コカ・コーラは、あの時代の表現者たちにとっての“次の予感”であり、強烈な、戦後日本の一つのシンボルだった」。緊急事態宣言のとき、銀座で潮の香がしたことを話したら、杉山さんもそう思ったと。その後、銀座1丁目まで歩き、伊藤昊が写真に写した「イタリー亭」にはじめて入る。ナポリタンをいただく。


7月2日(木)

午後、渡邉康太郎さんがパーソナリティーを務めるラジオにオンラインで参加。青山ブックセンターの山口さんと。オンラインの自分の背景はゴールデンゲートブリッジ。風通しが良さそうだった。コロナ禍のなかで書店をどう存続させるかがテーマ。書籍は利益率が低いので、自社で本をつくって、自社で販売する道に移行するという意見で一致する。


7月3日(金)

朝7時45分。「鬼はそと」というかけ声をあげて、銀座玉手箱のメンバーのお店を練り歩き「豆まき」を行う。コロナ禍が、このまま収束に向かってほしいという願い。もちろんお店ごとに換気と消毒はしっかり行う。コロナ禍の打撃を受けているからこそ実現した。おもしろいことをして、足下を考えるということだろう。


7月5日(日)

NHKワールドの「DESIGN TALKS plus」の取材を受ける。小倉ヒラクさんと渡邉康太郎さんがコロナ禍を考える対談の番組だが、そのなかで、森岡書店の対応からコロナ禍の一側面を見るということ。「この先、小売業の90%はオンラインに移行するのではないか」と答える。答えたあとに90%は言い過ぎたかと思うが、変える必要はある。


7月6日(月)

午後、青山のCOMME des GARÇONSの事務所へ。JUNYA WATANABE COMME des GARÇONSの今期のコレクションの発表は、コロナ禍の影響を鑑み、オンラインと書籍のかたちで行う。そのモデルの一人を私がつとめることになった。本のイメージをデザインに取り入れたコレクション。おそらくコロナ禍における本の役割を意図したのではないだろうか。写真は北島敬三さんが撮るという。撮影時に着る衣装を試着する。靴のサイズが大きい。足のサイズが縮んだのかもしれない。


7月7日(火)

月光荘特製のレモンケーキをいただく。


7月8日(水)

Zoom会議のまえに髭を剃る。坂東玉三郎の写真集をつくることを見送る。


7月9日(木)

銀座5丁目の竹葉亭にて鰻をいただく。英気を養い、いま竹葉亭で食事できることの有り難みを感じる。


7月12日(日)

10月に予定していたワインの書籍の出版記念イベントが延期になる。コロナで取材の進行が大幅に遅れているとのこと。


7月14日(火)

評論家の多木浩二が撮った建築写真について飯沼珠実さんとインスタライブを行う。


7月16日(木)

NHKワールドの「DESIGN TALKS plus」の追加取材を受ける。コロナ禍の世界を乗りきっていくために最も必要なことは、と訊かれて、私が知りたいと思うが、おそらく、しばらく試行錯誤をつづけて、そのなかでかたちを見つけていく他ない。しかし、私には多くの資金はない。これまで常に一発勝負だった。撤退は、学びになるかもしれないが、再起には時間がかかる。学びを活かして、次の展開にスムーズに移行する資金的な余力はない。今回もすみやかに道を見つけなくてはいけない。以前、平松麻さんが、「森岡さんは鋭い美意識で選ぶ、というよりは、落ちているものを拾う、という感覚」と言っていたが。


7月17日(金)

午前、自宅にて『メンズクラブ』に掲載する伊藤昊のテキストを書く。午後、法政大学総長の田中優子さんと対談。コロナ禍がなかったなら、今年の入学式で卒業生代表としてスピーチをする予定だった。田中優子さんとは今日はじめてお会いする。和服の帯にはオレンジのスリットが入っている。「アバター」が話題に。ネット上の仮想空間における、ユーザーの分身を指す用語として知られている言葉だが、田中優子さんは別の角度から考えている。現実空間における個人の分身としての「アバター」。「人がいくつもの名前を使い分ける多名の江戸時代から、近代の個人に統合する時代を経て、今は個人主義から分身主義へゆるやかに移行する時代になったのではないか」と。例えば、江戸後期の渡辺崋山は、現在、画家として有名だが、同時に思想家であり、蘭学に明るく、三河国田原藩の藩士で、俳諧もひねった。ある一人のなかに、いくつもの自分がいる事例。かつて、「個性的でありなさい」とか「何かひとつ好きなことを見つけなさい」と言われたことがあったが、こういった考え方は、すでに過去のものだという。個性に価値を求めた自分探しなど行わない。自分を次々とつくり出していくというビジョンが大切。藩士としての自分が、思想家としての自分に投資をしている。画家としての自分が、俳人としての自分を支えている。そんなイメージが立ち上がる。


7月18日(土)

小雨のなか、次女と池袋のWE ROADに行き、植田志保さんのドローイングを見る。


7月21日(火)

『POPEYE』にて牧野伊三夫さんの「のみ歩きノート」を読む。


7月24日(金)

昭和4年に改装した森永キャンデーストアの写真を見る。バラック建築。


7月25日(土)

朝、麹町へ。コロナ禍ではあるが、あたらしいオフィスビルが竣工した。その広告用のPVで、このビルで働くビジネスマンという役で起用してもらう。ランチにカレーが振る舞われる。撮影の現場も最少人数。


7月28日(火)

陶芸家の石原稔久さんとインスタライブを行う。


7月30日(木)

銀座7丁目のWESTにて珈琲を飲む。


7月31日(金)

立花文穂さんから『傘下』出版記念展のDMが届く。おそらく立花さんが書いた「200」という文字がいい。





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