撮影=森岡督行(以下全て)
1月29日(月) 晴
朝5時起床。新宿駅から成田エクスプレスに乗車して成田空港へ。出発ロビーで前村さん、岡本さんと合流し、海外保険に加入。インドのニューデリーへ。21_21 DESIGN SIGHT で4月に開催される「Khadi インドの明日をつむぐ−Homage to Martand Singh」展のリサーチが目的。Khadi−カディとは手紡ぎ手織りの布のことで、実際に展示する布を探すのが重要な仕事。Martand Singh−マルタン・シン氏は、カディの展覧会を世界中で企画した人物らしく、詳しい情報を現地で取材する。搭乗する飛行機の出発時間が30分早まるという告知があり焦る。出発が早まるのはめずらしいのではないだろうか。10時間ほどでニューデリーに到着。出迎えの車に乗ってホテルへ。ホテルでコーディネーターの黒岩さんと合流し、夕食のカレーをいただきながら明日からの訪問先を確認。シャワーを浴びてすぐに就寝。
1月30日(火) 晴
7時起床。ホテルで朝食をいただき、自動車でラケッシュ氏が経営するテキスタイルの縫製工場に向かう。それにしてもインドはスズキの車が多い。前村さんがラケッシュ氏にインドに於けるカディとマルタン・シン氏についてインタビューを行う。カディの見本帳を見せてもらいその織り目の細かさに目を奪われる。この見本帳はぜひとも4月に展示したい。その後、国立工芸美術館にて、インドの手織布の展示を見学し、そこでテキスタイルデザイナーのリタ氏と合流。リタ氏のアトリエを訪ねカディとマルタン・シン氏についてインタビューを行う。ホテルへの帰り道にナイトマーケットに立ち寄り、実際に市井で布が販売されているようすを視察する。
1月31日(水) 晴
午前、ニューデリーの国際交流基金を表敬訪問する。その後、現地でアパレルブランドのキヤリコを運営する小林史恵さんと合流し布地の専門店へ行く。小林さんの解説をききながら売り場を見て歩く。500カウントのカディを出してもらうが 、これだけ細い糸を使ったカディは珍しいと教えてもらう。数が大きいほど糸が細くなり生地の向こうが透けて見えるよう。布地専門店の地下では食品が販売されているが、これはカディが中心となって経済をまわすというガンジーの思想の実践なのだそう。そしてそれが非暴力の独立運動につながった歴史がカディの背後にある。また、世界の手織布の95%以上がインドで生産されており、約430万人の職人さんがそれを支えているという。店内でカディ・クルタを購入。窓の外にはに巨大なインドの国旗が風になびいているが、その中心には車が描かれている意味を今更ながら理解する。夕方の飛行機でアーメダバードに向かう。1917年築の The House of MG に宿泊する。テラスでカレーをいただく。アーメダバードは禁酒で基本的に菜食主義。
2月1日(木) 晴
朝、オート三輪に乗ってサーバルマティー河のほとりに出て、そこから徒歩で川沿いの街を散策する。自動車で見る風景、オート三輪で見る風景、徒歩で見る風景はそれぞれ違う。徒歩の場合は匂いが加わる。一旦ホテルに戻り、自動車にてキヤリコミュージアムへ。入口でカメラや携帯電話、ペットボトルをはじめ、財布以外のすべても手荷物を預ける。館内を見学。その後隣接するサラバイ邸を訪問し、スリー・サラバイさん、アシャ・サラバイさんに挨拶をする。邸宅内を案内していただく。その後、アシャさんが経営する工場に向かい、縫製や染織の様子を見学する。その後事務室にて2002年に展示したカディのドレスを見せていただく。線の細さが際立って美しい。インド独立のシンボルだったカディが、ファッションの素材として完全に定着したことを示しているようだ。これもぜひ4月の展覧会で展示したい。話をお聞きするとこのドレスはアシャさんがデザインしマルタン・シン氏が監修した。夜、アーメダバードの旧市街地を徒歩で散策する。アーメダバードの迷路のような旧市街地はユネスコの世界遺産に登録されている。
2月2日(金) 晴
晴れ。朝、一昨日購入したカディ・クルタを着用する。ガンジーがアーメダバードで滞在した家ガンジー・アーシュラムを見学。必要最小限の家具で構成された室内を見て生活工芸における「ふつう」を思い出す。そのあと、ガンジーが1920年に創設したクジュラート大学へ行き校長先生を表敬訪問する。ホールに移動。カーディを纏った学生が集まり、祈りにも近い歌を歌いながら、糸を紡ぐ行事に参加。ガンジーの思想が今でも教育の基盤になっている。私は校長先生に導かれ、壇上へ。成績優秀者の発表が行われ、急遽、私が証書を手渡す係になる。おそらく、学生の目には、日本から来た高名な学者か僧侶に映っているのではないだろうか。ここはしっかり役割を果たしたい。学生の目を見て神妙な面もちで証書を手渡す。次に製紙工場を訪れる。この工場の特筆すべきは、カディの端切れを再利用して手で紙を漉いている点にある。その紙をノートや便箋に加工して販売もしている。この取り組みはぜひ記録したい。その後サラバイ邸に向かいアシャ・サラバイさんにカディとマルタン・シン氏についてインタビューを行う。ホテルに戻り、プールで泳ごうとしたが水温があまりにも低く、膝ぐらいまで足を入れたところで諦める。夜、ホテルでスリー・サラバイさん、アシュ・サラバイさんとカレーをいただく。
2月3日(土) 晴
朝、昨日訪れた製紙工場を再訪し、より時間をかけて収録と取材を行う。ランチにカレーをいただき、National Institute of Design へ向かい校内を見学する。この大学はイームズ夫妻が設立に携わったということで、イームズの資料などが展示されている。アーメダバード空港へ行き、飛行機にてデリーへ。デリーの空港でサブウェイのサンドイッチを食べる。定刻とおり飛行機に搭乗し日本へ。
2月4日(日) 雪のち晴
およそ10時間のフライトで成田空港へ到着。外は雪。前村さん岡村さんと別れ、リムジンバスで新宿駅へ。新宿駅西口の高野フルーツパーラーでフルーツサンドを食べる。丸の内線で帰宅。家族にインドのにおいがすると言われる。寝る。
2月5日(月) 晴
午後、明日からはじまる諏訪敦さんの展示の搬入を行う。諏訪さんがオリジナルのドローイングを描いた作品集『Blue』を販売する企画。諏訪さんのご先祖は終戦後の満州で引き揚げる際に命を落とされている。そのご先祖はもともと山形県から渡っていて、それを諏訪さんなりに絵画にした作品を以前眼にし、感銘を受けたことがあった。亡くなりはしなかったが自分の祖父も同じような環境にいた。
2月6日(火) 晴
午前10時、中目黒のスマイルズにて日販の方々と新しい形態の書店の打ち合わせを行う。午後、諏訪敦さんの展覧会がはじまる。ロバート・キャンベル先生ご来店くださる。
2月8日(水) 晴
午後、51%の三浦哲生さんと GINZA SIX の蔦屋書店内のスタバにて神田錦町開発の相談。その後、青山に移動し、「One dish. One wine. One artist.(ひとつの料理、ひとつのワイン、ひとつの音楽)」をテーマとするレストラン OUT にて食事をする。
2月9日(木) 晴
午後、神楽坂の一水寮にて某社の方々に「生活工芸美術館構想」をお伝えする。その後、代々木公園駅に移動し、「Khadi インドの明日をつむぐ−Homage to Martand Singh」展のテキスト執筆についての相談。徒歩で渋谷ライオンに向かい2階でコーヒーを飲みながら、テキストの構成や「生活工芸美術館構想」について考える。ライオンから出ようと思って階段を降りると1階にフリーライターの上條さんが座っていることに気づき挨拶する。
2月15日(木) 晴
夕方、美篶堂の上島明子さんと「ゆめみる舎」の谷川恵さんご来店。望月通陽さんの紙版画に、望月さんご自身が文を添えた画文集『Mの辞典』の展覧会についての打ち合わせを行う。
2月16日(金) 晴
夕方、某研究所の方に「東京大自然説」と「特殊経済理論」「優良特別高等警察」について説明する機会をいただき、好評をいただく。
2月17日(土) 晴
午後、銀座トリコロールにて編集者のAさんから、「もっとアイデアが出てこないのか」という叱咤激励を受け昨晩話した「東京大自然説」と「特殊経済理論」「優良特別高等警察」について説明し好評をいただく。
2月19日(月) 晴
14時30分、Mさんといわゆるヴィンテージ写真集の展覧会についての相談。19時、銀座5丁目にて今年の松本六九ストリートの打ち合わせに参加。皆川明さんが提唱した「日用美品」がテーマになる。生活工芸美術館構想についても話題にあがる。有楽町駅に走ったが、ギリギリのタイミングで終電を逃す。
2月20日(火) 晴
午後、昨晩の酔いがまだ残る。 白石和弘さんと松屋屋上のテラスにて写真集の制作と12月に開催する予定の写真展の打ち合わせを行う。
2月21日(水) 曇
午前、株式会社森岡書店定例会。夕方、スタータップ TOKYO のトークイベント登壇。その後、神楽坂に移動し、先日鬼籍に入られたフルタヨウコさんのお別れ会に参加。フルタさんお土産にジャムやクッキーを持ってきていただきありがとうございました。忘れません。
2月23日(金) 晴
午後、ほしぶどうさんが編集者の佐々木紅さんと一緒にご来店。春に福音館書店から絵本『おかお みせて』を上梓されるのでその出版記念イベントの打ち合わせ。ほしぶどうさんにとっては初の著書。これから絵本作家として活躍が期待される。1日かぎりのイベントとして、ほしぶどうさんにペットのイラストを描いてもらう企画が成立する。夕方、21_21 DESIGN SIGHT にて「Khadi インドの明日をつむぐ−Homage to Martand Singh」展の打ち合わせ。
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