撮影|森岡督行(2点とも)
4月1日(水)
午前、銀座7丁目の資生堂銀座ビルへ。『花椿』編集部にて伊藤昊の写真の説明をする。午後、「おかみどんどん」の和田真幸さんから、一刻も早く新川の政策金融公庫に行って、融資の手続きをした方がよい、という話をきき、売上の書類を持ち、築地駅から日比谷線に乗って茅場町駅へ。そこから徒歩で新川の政策金融公庫に行く。到着したのは18時。長蛇の列を予想していたが、通常、18時は営業時間外、ということなのだろうか、自分の前に並んでいるのは2人だけだった。窓口で、融資の申請をすると、短い時間で申請用の書類等の説明がある。帰り際、久しぶりに、茅場町の交差点の長寿庵で、せいろをいただく。その後、伊藤昊の写真集を予定通り出版することを決める。
4月2日(木)
14時、おもにMUJI GINZAなどのMUJI BOOKSで販売する銀座のガイド本『GINZA』の取材を受ける。編集は上海MUJIができるときお世話になった乙部さん、写真は『AERA』の「現代の肖像」でお世話になったキッチンミノルさん。このガイドを持って銀座を歩ける日がはやく来てほしい。
4月3日(金)
午前、住民票と印鑑証明をとりに杉並区役所へ。ロビーで牧野伊三夫さんと電話、はやく緊急事態宣言を出した方が良い、ということで意見が一致する。午後、泊昭雄さんと相談し、明日4日(土)、明後日5日(日)も営業を自粛することにする。夕方、日本経済新聞の記者の方から取材を受ける。小さな街の書店の役割がテーマだが、コロナの状況下で、これまで自分が考えてきた、本を介したコミュニケーションの現場という観点を変えていかないといけないだろう。インタビューを受けることは、自分自身の考え方を確認することにつながる。記者の方のお子さんはまだ小さい。コロナ下の保育園も大変だろうと思う。ただでさえ、ノロウイルスやインフルエンザがはやりやすい環境なのに。
4月4日(土)
午後、泊さんと相談して13日(月)まで休業することにする。
4月5日(日)
午後、中野新橋へ。丸ノ内線の車内で座席の後ろの窓を全開にする。山田写真製版所の東京本部にて、伊藤昊写真集の打ち合わせ。プリンティング・ディレクターの熊倉桂三さんと方向性を確認する。20代後半に、ナカノヨガという我流のヨガを考案し行なっていた。ずいぶん長く実践していなかったが、免疫力をあげるため、夕方、思い出しながらやってみる。ストレッチと呼吸とバランスボールを組み合わせたもの。当時は中野に住んでいたのでこういう名前になった。コロナに感染しないよう続けていこうと思う。
4月7日(火)
緊急事態宣言が発令される。本来なら、多和田葉子さんをベルリンからお迎えしてトークイベントを開催しているところだった。企画を一緒に進めていた谷川恵さんと「中止を早めに決めたので、お客さんにも迷惑がかからなかった」という話をメールでする。10月に予定していた某企画の延期が決まる。これは当面の店舗運営に影響を及ぼす。コロナ禍の先行きが不安になり、政策金融公庫に電話を入れて、融資の金額を上げたいという相談をする。15時、マガジンハウス『GINZA』の取材で、自分が影響を受けた音楽のアルバムとしてビートルズの『リボルバー』、映画として『ニュー・シネマ・パラダイス』をあげる。編集の矢作さんとコロナがどれくらい続くか話をする。10月くらいまでか。帰り際、銀座松屋のエントランスに「臨時休業のお知らせ 4月8日(水)から当面の期間」という告知が張り出されている。それを撮影するテレビ制作の方々がいる。夕方、諏訪敦さんから、静物画の被写体としてコーヒーミルと竹の子の画像が届く。まったく想像できない組み合わせだ。『芸術新潮』に静物画探検隊の記事が出るころにはコロナが落ち着いていてほしい。
4月8日(水)
Zoomにて、7月に開催する予定の企画の打ち合わせを行う。オンラインでの打ち合わせははじめてだが、これから機会が多くなるのだろう。自宅にてナカノヨガを行う。当面のあいだ店舗を臨時休業することを決める。
4月9日(木)
午後、臨時休業の張り紙をするため銀座に向かう。丸ノ内線の車内で座席の後ろの窓を全開にする。その後、小倉ヒラクさんが下北沢にオープンした発酵デパートメントに行く。夜、吉田知哉さんと伊藤昊写真集の印刷立ち会いについて相談。13日に、富山の山田写真製版所で行う予定だったが、富山まで出張するのはいまの状況では難しいという判断になり、印刷は、同社の熊倉桂三さんに一任する。
4月10日(金)
夜、自宅で田中小実昌さんのエッセイ「銀座をぐるぐる」を読んでいると、「東宝東和の第一試写室は、銀座プレイガイド・ビルの裏口のほうからエレベーターにのって、九階。このあたりは銀座2丁目だろうか。」という記述があり、伊藤昊の写真に写っていた銀座プレイガイド・ビルと一致することが判明する。
4月15日(水)
伊藤昊写真集『GINZA TOKYO 1964』の予約販売をインスタとフェイスブックで開始する。
4月16日(木)
今日までに、6月末までの森岡書店の企画がすべてキャンセルになった。いまのコロナの状況下なら仕方ない。しかし、政策金融公庫からの融資は月末をめどに進んでいる。融資がおりたとしても、企画が実行できないこの状況で、返済していけるのだろうか......。伊藤昊の写真集はどれだけ販売できるのだろうか。不安に思っているのは自分だけではないだろうけれど......。大阪の吉村洋文知事が、学校の休校が長期に及んでいるため、子どもたちを支援しようと、図書カード2千円分を配布するという。予算規模は総額20億円で、対象者は100万人。ニュースにも敏感になる。
4月17日(金)
午後、コロナ禍がどれくらい続くかというアンケート取材があり、自分は、希望をもって6月に収束と回答する。いや、そうでないと困る。その後、ときどき店舗に来てくださっているAさんが、なんと、『GINZA TOKYO 1964』を100万円分買いたい、と申し込んでくださる。Aさんはいくつかの会社を経営している。ただただAさんにお礼を述べる。安倍首相が、10万円の給付金へ向けて補正予算の組み替えを指示したという。
4月19日(日)
発酵文学研究会をZoomにて行う。朝吹真理子さん、小倉ヒラクさん、ドミニク・チェンさん、渡邉康太郎さんがメンバー。今回は、ドミニク・チェンさんの案内で、陸羽の『茶経』と岡倉天心の『茶の本』を読む。ハイデガーと天心、英文の凄さ、「不完全」、九鬼周造との関係についてなど。
4月23日(木)
『FRaU』SDGs特集の、「あの人に聞いた、今日からできる100のこと。」の取材を受ける。SDGsには興味を持っていたが、内容はほとんど知らなかったので、この機会に調べてみる。そう言えば22年前、古本屋に就職するとき、リサイクルという仕事に惹かれたことを思い出す。食品ロスの観点から「食事の回数と量を適切にする」と回答する。コロナ禍の最中、或いは、コロナ後、SDGsはより着目されてしかるべきなのではないか。
4月27日(月)
午後、杉並郵便局に不在通知を受けた銀行からの書類をとりに行く。「特等・東京2020オリンピックご招待」の当選番号が大きく表示されていて、無力感を感じる。夜、資生堂『花椿』で連載をはじめる「現代銀座考」のイラストにとりかかる。銀座4丁目の和光を月光荘ノートにかいてみる。下書きはない。
4月29日(水)
政府から、マスクが届く。これで感染が少しでも拡散しないのならいいが......。
前の日記へ 次の日記へ