*nakaban作品の通信販売をはじめました
『工芸青花』の記事の柱のひとつは西洋中世のロマネスク美術です。理由はいくつもあるのですが、フランスの「ゾディアック叢書」から多分に影響をうけています。それは、アンジェリコ・シュルシャン修道士 (1924-2018) が修道院内ではじめたシリーズで、ヨーロッパ各地のロマネスク聖堂の美術、建築を他にない視点で紹介しています。当初はアンジェリコさんみずから撮影、編集を手がけ、1954年から2004年まで225冊も刊行されました。
『工芸青花』創刊号 (2014年) では美術史家の金沢百枝さんとともに、アンジェリコさんに会いにゆき、そのロマネスク観をうかがうことができました。わすれがたい日になりました。
画家のnakabanさんもロマネスクとゾディアック叢書を愛する仲間です。アンジェリコさんの死を金沢さんと私に知らせてくれたのもnakabanさんでした。今展会期中、3月1日はアンジェリコさんの1周忌にあたります。「ゾディアックのロマネスク」を描くnakabanさんの絵やタイルで、「恩人」をしのびたいと思います。──「Anno Domini 2019 ロマネスクと私」展(於工芸青花)目録より
nakaban
画家。1974年広島県生れ。絵画作品を中心に数多くの書籍の挿絵、文章、絵本、映像作品を発表する。新潮社「とんぼの本」や書店「Title」のロゴマークを制作。著書に『ダーラナのひ』(偕成社)、共著に『窓から見える世界の風』(福島あずさ著/創元社)等。
暗い旅・ロマネスク nakaban
ロマネスクは遠い時代から届いたこだまのよう。それも彫られ、聖堂に積み上げられた石に反響したこだま。複雑に反響しているようで見事に全体で一つになっていくような。フランス語のある言い回しで、暗くて古い時代の、ひるがえって時の始まりのことを指し“la nuit des temps” と言うそうです。すてきな言葉だと思いませんか?
ロマネスクのその一見親しみやすいフォルムに強く惹かれたとしても、やはりそれは暗闇の向こうにある存在なのです。それでもこの展示で、わたしが心底好きなロマネスクの暗闇に一つ足を踏み入れてみたいと思います。その暗い旅の手引き書として外せないÉditions Zodiaque(以下:ゾディアック叢書)という本があります。“ロマネスクにはそれ自身の知られざることばがあります”と書かれた “Bourgogne Romane” をはじめとしたゾディアック叢書を開くと、そのロマネスクのことばをひろい集めながら果てしなく続く旅そのものが見えて来るようです。取材から印刷、製本まで配本を除く全てが修道院での自主で行われ、“労働は祈りに通じる” というベネディクト派の教えを書籍づくりという形で体現したゾディアック叢書。この本はこの展覧会の会場を運営する “工芸青花” のバイブルでもあります。
本展でみずからに課しているテーマはふたつあります。ひとつはロマネスクのかたちに学び、自分らしい絵の描き方を探すこと。そしてもう一つはそのゾディアック叢書から、なにかを学ぶことです。
nakaban《Lettres à “Z”》
■ 大判ポストカード(各12×17cm)
■ 10枚組
■ ケース付(nakabanさんの文章を掲載しています)
■ 2022年9月|新潮社青花の会製作
■ 3000円+税
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