美術史家・金沢百枝さんが紹介する刺繡布とレース。インドの女子修道院で作られたものです
■1990年代-2000年代初
■ハンカチ、クロス、テーブルクロスなど
■綿、オーガンジー
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修道院の工芸 金沢百枝
修道院は中世のころより、俗世から隔絶した瞑想生活を送りながら、そうした生活を維持するためにさまざまな経済活動をおこなってきました。たとえばグランド・シャルトルーズ修道院の薬用酒や、トラピスト修道院のクッキー、バター、ビールの製造などです。いまでは一般的なカヌレやマドレーヌといったお菓子も、ヨーロッパの女子修道院が起源とされます。
祝祭日にちなんだお菓子のほかに、女子修道院ならではの「商品」といえば針仕事。18世紀以降、伝道のためインドへわたった修道女たちは、修道院の経営のため、そして市井の女性のたつきにもなるようにと、ヨーロッパの刺繍技法をつたえました。現在のインドは修道院も修道女の数も減っているようですが、ラーンチー、バンガロール、ポンディシェリ、ゴアなどではいまも刺繍やレースがつくりつづけられています。ヨーロッパの女子修道院の手仕事はさらに減っているようなので、インドの修道女の針仕事は貴重なものと思います。
インドで暮していた子どものころ、もっていたハンカチはどれも修道女の刺繍入りでした。御紹介するのは、1990年代から2000年代初めに母があつめたものです。インドの女子修道院の針仕事のよさを知っていただけたら幸いです。
金沢百枝 Momo Kanazawa
美術史家。多摩美術大学美術学部芸術学科教授。西洋中世美術、主にロマネスク美術を研究。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。理学博士・学術博士。2011年、島田謹二記念学藝賞。2016年、サントリー学芸賞。著書に『ロマネスク美術革命』(新潮社)、『ロマネスクの宇宙 ジローナの《天地創造の刺繍布》を読む』(東京大学出版会)、共著に『イタリア古寺巡礼』シリーズ(新潮社)