撮影|高木崇雄
いささか汚れやキズに無頓着なところがあります。店で扱うものも同じで、焼きものだったら釉薬が一つ二つ泡になっていたり、高台の削りが少々雑だったりしても、所詮は焼きもの、調子も形も良いのだから、まあ許してあげてください、と思ってしまう。吹き硝子に泡が入っていても、良い景色ですよね、ほくろがない人がいないように、つるんとした器なんて気持ち悪いですし、と。なので、同じ模様のお皿は他にありますか? と尋ねられても、うちは八百屋みたいな工芸店なので、同じものって揃えられないんです。30センチの大根5本ください、って仰られても無理なんですよ、旬の仕事、一番新鮮な大根5本なら揃えられるかもしれませんが……、などと言ってしまいます。本当に申し訳ない。

とはいえ、こちらの検品ミスか、あるいは店で手に触れているうちに当たりどころが悪かったせいか、手や口が触れる箇所に切れがあったりすると、さすがに売ることはできません。とはいえ捨てるにも忍びないので、そんな時は繕いをして自分で使います。漆でなおす方法は以前、盛岡で漆の仕事をする田代淳さんに教わりました。ひとり問屋・日野さんの会で漆の特集を行った際、田代さんに漆継ぎの講習会を開いていただき、僕も参加したのです。習った当初はしばらく手を付けていなかったのですが、自宅の器を一つ欠いたことをきっかけに、いくつか店にたまっていた「不良品」を実験材料として漆継ぎをやってみることにしました。そして、田代さんが書いてくれたテキストと、習った時にとったメモを参考にやっていくと、さくさく進む。

講習会用に田代さんが用意してくれた漆継ぎの道具一式は、作業のベースとなる「定盤」こそ田代さんが作ってくれた漆塗りの板ですが、他は市販品を組合わせたもので構成された、言ってはなんですが、ごく簡単なものです。ただ、その簡素さが、とてもとっかかりをつけやすく、作業が捗ります。アートナイフやプラスチックのへらが適切に選んであるので、余計な選択肢が無い。テキスト通りに一つ終え、この調子ならばと他にもあった割れたり欠けたりしていたものをどんどん直す。店で、手のあいた時にやっていると、作業をご覧のお客さまから、直しができるのかと尋ねられたりもします。

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