撮影=森岡督行

8月1日(水)

14時、恵比寿駅へ。泊昭雄さんの事務所を訪ねて泊さんが新しく刊行する『BEACH』の企画打ち合わせを行う。近所の東塔堂書店に立ち寄り、大和田さんと立ち話。夜、『nice things』の編集長の谷合さんと立野千恵さんと会食。


8月2日(木)

午前11時代官山蔦屋書店へ。2階のアンジンにてコンシェルジュの間室さんと読書についての対談。『日経ウーマン』の企画。森田真生『数学する身体』から、岡潔と小林秀雄の『人間の建設』を読んだ流れを話す。


8月3日(金)

夕方、資生堂ギャラリーにて宇多村英恵さん「戦争と休日」展レセプション参加。保養施設であり避難所であり、独房のサイズでもある黒い箱。その意味を可視化するオリジナルのテキスト。そこに立った私は、戦争の時代に思いを巡らせ、また、確かに、遠いドイツのリューゲン島の出来事を想像する。時間と空間の両方で意識が揺さぶられたような体験。宇多村さんのインスタレーションは、建築が持つ変遷の記憶を可視化し、再生することにあるのだろう。ある意味、人間の生を肯定しているようにも感じられる。新しい価値の創造があるなら、私は、あくまでも人間を肯定することに基づいてほしい。


8月4日(土)

羽田空港へ。朝の便で上海へ。荷物検査を済ませ、搭乗口まで歩いていると、中国の書籍で森岡書店を紹介してくださった編集者の吉野さんと遭遇する。吉野さんもこれから北京へ向かうということで、明後日に合流することにする。吉野さんと別れて1秒後に、mameの黒河内さんと遭遇する。黒河内さんはこれからソウルへ行くという。予定通り上海に到着。バッハの幅さんと合流。そういえば上海の空気が以前来たときよりも綺麗な気がして、訊けば、二輪車がほとんど電化されたという。日本の書店事情についてトークイベントを行う。会場は満席。担当者に訊くと、中国政府が新しく書店を作ることに対して予算をつけたらしい。ここからは予想だが、例えばニューヨークにはストランド書店がある。サンフランシスコにはシティライツ書店がある。パリにはシェイクスピア書店がある。それがある種の市民の心の拠り所になっていると思う。観光客はそこでトートバッグを買って、自分の住んでいる街で使っていたりする。考えてみれば、ヤンキースなどと同じような役割を持っているのではないだろうか。巨大な高層ビルが立ち並び、日本より速い新幹線が走り、スペースシャトルなどの宇宙開発も発展し、空母を建造し、その次は書店を作ろうということになったのではないだろうか。すでに素晴らしい書店や図書館はたくさんあるが、どんどん加速させる。幅さんと、同じ土俵には乗れないという話をする。トーク終了後、すぐさま上海虹橋駅に向かい 。新幹線で北京へ。お よそ5時間。幅さんと本と本屋について話しながら。北京のホテルに宿泊。


8月5日(日)

朝、車で北京のトークイベント会場へ移動。ここでもたくさんのお客さんが聞いてくれる。トーク終了後、現代的な北京の街とはまた違った風情のある、昔ながらの雰囲気がのこる街に移動し、北京ダックをいただく。街の名前はかわからない。夜、幅さんとホテル近くのバーでビールを一杯飲んで労をねぎらう。


8月6日(月)

朝、車で北京国際空港に移動。空港の建築を眺めつつ指定のターミナルに向かう。無事東京に到着。銀座の店舗に向かい、ミヤケマイさんと合流し、明日からの展示会の搬出を行う。


8月7日(火)

午後、D-LANDの酒井博基さんがご来店。現代の東京という都市のあり方についてインタビューを受ける。最近思うことをさまざま話したが、高杉晋作の辞世の句である「面白き事もなき世を面白く」という結論になる。


8月8日(水)

13時、丸の内の「やんも」にてKさんと会食。15時、キリンダイアリーの田村さんがご来店。アナログスピリットというテーマでインタビューを受ける。


8月9日(木)

『& Premium』の企画にてSa-Rahのシャツを紹介するための撮影。


8月10日(金)

午後、世田谷文学館から依頼を受けた原稿を書く。写真家は、子供を撮ることによって、写真家が考えるその社会のあり方を示すことができるのではないかと考えている。その観点から以下の3冊の写真集を選んで紹介文を書く。土門拳 『こどもたち』は、今日からみれば、貧しい日本が舞台だが、路上で遊ぶ子供からは強力なエネルギーが放たれていて活力が感じられる。荒木経惟 『さっちん』 は、荒木経惟の自画像とも称される通り、ここに写った子供たちは、どこか常識の範囲内で逸脱しているようだ。時代にはパワーがあり、それが子供たちにも乗りうつっているようにも感じられる。何より遊ぶことを楽しんでいる。川島小鳥 『未来ちゃん』 の主人公はいつも愛くるしく、このような表情の子供がたくさんいる社会になってほしいと願わざるをえない。


8月16日(木)

12時、中目黒にて文喫の打ち合わせ。1500円で珈琲/紅茶が飲み放題。9時−23時の入店が可能。3万冊の本。夜、東松原のチェリーにて、平井かずみさん、後藤由紀子さん、小林和人さんと会食。しかし、私は所用があり早退。


8月20日(月)

15時、アーティストの田中麻記子さんご来店。8月3日に発売されたばかりの『Vu Vu』出版記念展の搬入・飾りつけを行う。街や建物、フランスの風景などからインスピレーションを得たデッサンを中心に構成。特に意味があるとかではなく、響きで『Vu Vu』というタイトルになったとのこと。しかし展示した作品には全て水のイメージが描かれていた。


8月21日(火)

15時、今後の本屋のあり方について共同通信の取材を受ける。夜、田中麻記さんのトークイベントを開催する。編集者の中村みずえさんから田中さんへ100の質問。足のサイズなど。


8月23日(木)

午後、千駄ヶ谷駅へ。新宿御苑の方に出て某社を訪問。馬喰町のある物件で絵本のギャラリーが展開できないかという企画の相談。その後、神楽坂のラカグに移動して、11月に開催予定の「白と青」展の企画の相談。20時、新宿三丁目のランブルにて、ANAの会員向け雑誌『アナログ』のインタビューを受ける。


8月24日(金)

午前、銀座の店舗にて帽子千秋さん、江原さんと合流し、石島にて会食。その後盆源コーヒーで抹茶ラテエスプレッソをいただく。私はそこで別れて、羽田空港へ。飛行機にて能登まで。能登空港でギャラリーSUの山内彩子さんとガラス作家の大迫さんと合流し、赤木明登さんのアトリエを訪ねる。赤木さんと12月に予定している『二十一世紀民藝』展の相談。その後能登の海岸で日本海に沈む夕日を眺める。ちょうど今日が七尾市のお祭りの日にあたっていて、夜の催事を見学する。中村好文さんが設計した赤木さんのゲストハウスに宿泊する。引き出しの中にクートラスのカルトが潜んでいた。


8月27日(月)

午前、智子さんの案内で地元の人もあまり立ち入らないという滝へ。滝の前には社もあるが、やはり人影はない。滝の裏側が空洞になっていて、そこを歩いて通り抜ける。さらに、山道を上がったところに、もう一つ滝があるというので、途中、ロープを伝いながら登ると、崖の向こう側に滝が見えてくる。そこから先には行けない。滝を眺めていると、滝の上の林から、女性が、こちらを見ていて、あっ、となった。「山の神」だろうと思った。女性はすぐに山の中に戻って行った。おそらく幻想だが、そう感じさせる場所なのだろう。その後、車で近くの海岸に移動して、石拾いをする。そこで赤木さんと合流。昼食に、中谷邸に向かい蕎麦をいただく。


8月28日(火)

夕方、恵比寿へ。ルミネが主催するトークイベントにて、D-LANDの酒井博基さんと登壇する。書店のあり方について。外は雷が鳴り響く。


8月29日(水)

午前、御茶ノ水の日販にて新規事業として生活工芸美術館を一緒に運営できないかを提案する。14時、小伝馬町の株式会社コスギにて来期のポロシャツ企画の打ち合わせを行う。17時半、鈴木ビルの地下にてマエダサチコさんのワークショップを開催する。


8月30日(木)

13時半、神保町のfusionNにて生活工芸美術館の実現に向けた具体的な会議。15時、銀座三越にて三越の贈り物選定委員会の会議。


8月31日(金)

始発の新幹線で山形へ。駅前で山形県庁の柴田さんと合流し、遊学館にてリニューアルの概要を伺う。その後、文翔館に移動して山形ビエンナーレ「畏敬と工芸」の搬入・飾りつけを行う。出展作家の沖潤子さんとサカキトモコさんとともに会場を構成していく。私は主に橋本雅也さんの作品の設置を行う。湯殿山の神秘をコンセプトにした展示がひきたつ結果となった。搬入後に「ふくろ」にておでんをいただく。


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